トラボプロスト点眼液の先発品情報
一般名:トラボプロスト
効能・効果
緑内障、高眼圧症
剤形・規格
トラバタンズ点眼液0.004%(2007年9月薬価収載)
製造販売元
ノバルティスファーマ(販売提携 アルコン ファーマ)
トラボプロスト点眼液の基本特許
トラボプロスト点眼液の基本特許は以下の通り。
トラボプロスト点眼液の基本特許(物質特許及び用途特許)は、2014年に満了し、再審査期間も2015年7月に終了しています。早ければ、2015年8月申請~2016年8月承認~12月薬価収載というタイムラインも可能と思われますが、2017年8月に初承認にとなっています。
トラボプロスト/チモロール マレイン酸配合点眼液(先発名:デュオトラバ配合点眼液)のジェネリックは、用途特許が2018年8月12日に満了するため、2017年8月申請~2018年8月承認となると考えられます。
トラボプロスト点眼液はAG?
今回、承認されたのはサンドのトラボプロスト点眼液のみでした。サンドとノバルティスからプレスリリース等は出されていませんが、サンドはノバルティスのグループ会社ですからオーソライズド・ジェネリック(AG)であると考えられます。
なぜ今、AGなのか?
再審査期間と基本特許からは、早ければ2016年8月にトラボプロスト点眼液のAGの承認を取得できたと考えられます。残念ながら、なぜサンドがこの8月にAGの承認を取得したかを分析することはできませんでした。
考えられる理由としては、
- AGに積極的に参入するという企業方針になった、
- 何らかの方法でジェネリックが開発されているという動きを察知し(例えば、MF登録された、ジェネリックメーカーが生物学的同等性試験に使用する先発品が購入された等)、対抗してAGの承認と取得した
AGの12月収載あるのか?
再審査期間が2016年4月15日に終了したため、AGは、2016年8月申請~2017年8月承認となったと考えられます。一方、「8月15日付医薬品承認情報 ~モメタゾン点鼻液 後編~」で分析しましたが、過去、新薬創出加算の適用を失ってまでAGを投入した製品はありませんでした。また、ノバルティスは既にいくつかAGを発売していますが、今のところ、通常のジェネリックに先行してAGを発売した前例はありません。
そのため、2017年12月にAGを薬価収載することはないのではないでしょうか。
AGの今後の動向に注目したいと思います。
AG以外のジェネリックの承認はいつ?
点眼剤のジェネリックのハードル
点眼剤のジェネリックの場合、錠剤とは異なるハードルがあります。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)のHPに「水性点眼剤の後発医薬品の生物学的同等性評価に関する基本的考え方」というものが掲載されています。
これによると、
“点眼剤の生物学的同等性評価に係る試験では、標準製剤と試験製剤につき、ヒトを対象とした適切な被験者集団における薬理効果又は臨床効果を指標とした試験を実施する。なお、試験の実施方法等については、適宜、審査当局と事前に相談し、適切な試験を計画し、実施することが望ましい。”
“試験製剤の添加剤の種類及び含量(濃度)が、医薬品の製剤特性に及ぼす影響を考慮して標準製剤と同一で、pH、粘度、浸透圧などの物理化学的性質が近似していると見なせる場合には、生物学的同等性試験は原則として不要である。”
とされています。
つまり、製剤特許等によって先発製剤と同じ添加剤を使用できないような事情があり、先発品と異なる添加剤をジェネリックが使用すると、錠剤のように健常成人男性を被験者として薬剤の血中動態を見ることだけでは足りず、効果を見る臨床試験に近い試験が課されることになるわけです。
トラボプロスト点眼液の製剤特許
トラボプロスト点眼液の製剤特許にフォーカスし、先発品と関連しそうな特許を調べたところ、2027年9月に満了する次の3件が発見されました。
先発品(トラバタンズ点眼液)との対比
先発品であるトラバタンズ点眼液の組成と各特許の請求項と実施例との組成を比較したところ、それぞれの組成に相同性が確認できました。特に、特許4785970・特許5411897の実施例の組成がトラバタンズ点眼液の組成と酷似しています。
各特許がトラバタンズ点眼液を保護しているか結論を出すためには、トラバタンズ点眼液を分析し、各添加剤の配合量を特定する必要はあるものの、この3件の特許とトラバタンズ点眼液の関連が強く疑われます。そのため、これら3件の特許は、ジェネリックの開発の障害となり得ると思われます。
AG以外のジェネリックの承認はいつ?
医薬品医療機器号機構のHPでMF登録状況を確認したところ、次のMF登録がされていました。
残念ながら、いつAG以外のジェネリックが製造販売承認申請されるかを分析することはできませんでしたが、最新登録が2017年1月・2月のMFがあることから、トラボプロスト点眼液を開発している気配がうかがえますので、AG以外のジェネリックは、早ければ2018年2月には承認されると思われます。
先発品と同じ添加剤が使用できない場合、ジェネリックにも効果を見る臨床試験に近い試験が課されますので、2018年2月以降に承認されるであろうAG以外のジェネリックがどのような添加剤を使用し、どのような試験を行っているかが注目です。
次回はドルゾラミド/チモロール配合点眼液(ドルモロール)について分析します。
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