2017年9月21日木曜日

8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 後編~

 前回に引き続き、ロスバスタチンについて分析します。今回は、AGのみに承認されている「家族性高コレステロール血症」にフォーカスしてみたいと思います。


「家族性高コレステロール血症」がAGのみな理由は?


 「家族性高コレステロール血症」の効能・効果がAGのみに承認されている理由は、「家族性高コレステロール血症」の効能。効果を保護する用途特許(特許5062940)があるためと考えられます。




特許5062940の内容


 特許5062940の内容は、
【請求項1】
(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル](3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸、または医薬的に受容可能なその塩を含有する、ヘテロ型家族性高コレステロール血症の患者の治療に使用するための薬剤。
です。

(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル](3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸はロスバスタチンですので、ロスバスタチンのヘテロ型家族性高コレステロール血症への治療用途を保護しています。




ジェネリックに「家族性高コレステロール血症」が追加されるのはいつ?


特許5062940の満了日


 特許5062940がいつ満了するかは、「特許権の存続期間の延長」制度との関係で、普通錠とOD錠とで異なります。特許5062940の原満了日は、出願日である2001年11月16日から20年後の2021年11月16日ですが、クレストール錠の剤形追加であるクレストールOD錠が2016年2月に承認されたことに基づき、1年7ヶ月27日の存続期間の延長がされています。そのため、延長がされていない普通錠については、2021年11月16日に、OD錠については、2023年7月23日に満了します。













ジェネリックの効能追加の時期


 特許5062940は、普通錠については、2021年11月16日に満了し、OD錠については、2023年7月23日に満了しますから、ジェネリックの「家族性高コレステロール血症」の効能追加されるのは、普通錠については、2021年11月17日以降OD錠については、、2023年7月24日以降になると考えられます。





特許5062940に対する無効審判


審判事件(2017-800048)


無効審判請求人:沢井製薬
事件の経過:2017年4月-審判請求→7月-答弁書→8月-請求取下

 「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940に対し、今年の4月に沢井製薬が無効審判請求をしています。沢井製薬は、特許5062940を無効にすることにより、いち早く「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を追加することを意図し、無効審判請求したものと推測されます。
しかし、特許権者側の答弁書が7月31日提出された直後の8月1日に、沢井製薬は審判請求を取下げています。


沢井製薬が無効審判を取下げた理由は?


 沢井製薬が無効審判を取下げた理由としては、
  1. 特許5062940の無効化をあきらめた
  2. 特許権者と無効審判を取下げることで合意した
が考えられます。

 沢井製薬の経営判断として、無効審判請求を取下げるという判断がされたという可能性はあります。しかし、一旦は沢井製薬として無効審判請求をするという判断をしたにもかかわらず、特許権者の答弁書提出直後に何の反論もすることなくあきらめるというのは、沢井製薬にあまりメリットが無く、1.は合点がいきません
 一方、“沢井製薬が特許権者からライセンスを受けることを条件に、無効審判の取下げに合意した”と考えると、特許5062940が有効に維持されることで、ジェネリック競合他社よりも早く沢井製薬だけが「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を取得できるというメリットが生じます。また、特許権者側にも、全てのジェネリックに「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を取得されるという状況を回避できるというメリットが生じます。2.の方が1.よりも合点がいくように思います。


沢井製薬の「家族性高コレステロール血症」の効能追加の時期は?


 1.の場合、家族性高コレステロール血症」の効能追加されるのは、無効審判請求を
していない他のジェネリックと同様に、普通錠については、2021年11月17日以降OD錠については、、2023年7月24日以降になると考えられます。
 2.の場合、ライセンス条件によりますが、8月15日に承認を取得した後、直ちに「家族性高コレステロール血症」の効能追加の一変を行い、早ければ来年の2月頃には「家族性高コレステロール血症」の効能が承認されると推測されます。
 沢井製薬がいつ「家族性高コレステロール血症」の効能を取得するかが注目です。また、沢井製薬の動きを受けて、他のジェネリックの中には特許5062940に対して無効審判請求してくる会社もあるかもしれません。他のジェネリックの動向にも注目です。


 次回は、オルメサルタンについて分析します。





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