2017年10月27日金曜日

ロスバスタチン効能追加

  2017年10月25日付けで沢井製薬ファイザーから家族性高コレステロール血症」の効能・効果、用法・用量の一部変更承認がされたというプレスリリースがされました。
「家族性高コレステロール血症」の効能追加については、“8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 後編~”で分析しましたが、効能追加の時期が予想よりも早く、また、沢井製薬の他に同じタイミングでファイザー(マイラン)が効能追加してきたことはまったく想定外した。



沢井製薬の効能追加


沢井製薬の効能追加が承認された理由


 通知 ”医政経発第0605001号 「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」”には、
“先発医薬品の有効成分に特許が存在することによって、当該有効成分の製造そのものができない場合には、後発医薬品を承認しないこと。”、“先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在し、その他の効能・効果等を標ぼうする医薬品の製造が可能である場合については、後発医薬品を承認できることとすること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと。”
と記載されています。
 この医政経発第0605001号に則れば、「家族性高コレステロール血症」効能追加の承認を取得するには、1.「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940を無効にする、又は、2.特許権者から特許5062940のライセンスを受ける
ことが必要と考えられます。

 沢井製薬は、「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940に対する無効審判を請求していましたが、途中で取下げています。これは、特許権者からライセンスを受けることを条件に、特許5062940に対する無効審判の取下げに合意したと推測されます。
 そのため、2.に該当し、沢井製薬は、「家族性高コレステロール血症」効能追加の承認を取得できたと思われます。



ファイザーの効能追加


 沢井製薬と同日にファイザー(マイラン)が「家族性高コレステロール血症」の効能追加することはまったく想定していませんでした
 それは「家族性高コレステロール血症」の効能・効果を保護する特許5062940に対して無効審判請求をしていたのは沢井製薬のみで、“8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 前編~”でジェネリック各社の提携関係を分析した結果では、沢井製薬とファイザー(マイラン)はそれぞれ単独であったからです。


ファイザーの効能追加が承認された理由


 特許5062940は現在も有効に維持されているので、1.ではなく2.に該当すると考えられます。
 沢井製薬は、無効審判を請求することで特許権者からライセンスを引出したと推測されますが、ファイザー(マイラン)が特許5062940に対して無効審判を請求した形跡はないので、無効審判以外の方法(例えば、特許権者と直接コンタクトしてライセンス交渉をする等)で特許権者からライセンスを引出したと思われます。
 日本でAG以外のジェネリックが無効審判等を経ることなく、特許権者からライセス受けるというのは、とても珍しいケースだと思います(私の知る限りでは初めてです)。
 また、無効審判等は公開されるので、他社に動向を知られてしまいますが、無効審判等を経ていないファイザー(マイラン)の存在を、沢井製薬が予想することは困難であったでしょう。沢井製薬は自分たち以外に効能追加してくる会社はいなだろうと予想していたのではないでしょうか?




家族性高コレステロール血症」の効能追加の時期


予想していた効能追加の時期


 “8月15日付医薬品承認情報 ~ロスバスタチン 後編~”では、沢井製薬は、“8月15日に承認を取得した後、直ちに「家族性高コレステロール血症」の効能追加の一変を行い、早ければ来年の2月頃には「家族性高コレステロール血症」の効能が承認される”と予想しました。
 しかし、今回、予想よりも4ヶ月も早く効能追加が承認されました。なぜ予想より早く承認されたのでしょうか?



来年2月と予想した理由


 少し古いですが、一変申請の事務処理期間に関する“薬食審査発第0522001号 「医療用医薬品の承認事項一部変更承認申請に係る標準的事務処理期間の取扱いについて」”という通知には、製造方法欄の変更を伴わない一変申請の総審査期間は、中央値を6ヶ月(うち、行政側の事務処理期間を5ヶ月)となるよう努める。また、その状況を踏まえ、さらなる改善策を検討する。”とされています。
 そのため、8月15日の承認から6ヶ月後である来年2月を一変承認の時期と予想していました。


最近の傾向


 ロスバスタチンに似たような一変申請の事例がないか調べてみたところ、モンテルカスト錠が見つかったので、紹介したいと思います。
 モンテルカスト錠は、アレルギー性鼻炎について、物質特許(特許2501385)が2016年2月26日に満了し、気管支喘息については、2016年10月14日に満了しました。
効能・効果特許2501385(物質特許)
気管支喘息10/14/2016
アレルギー性鼻炎2/26/2016
そのため、ジェネリックは2016年8月15日にアレルギー性鼻炎の効能・効果のみで承認されました。ジェネリックの承認後、気管支喘息の効能追加の一変申請がされ、約3ヶ月後の2016年11月9日に一変申請が承認されています。
 2月/8月にジェネリックが承認された後に効能追加の一変申請をする場合、6月/12月の薬価収載に間に合わせるといった柔軟な対応を、医薬品医療機器総合機構と厚生労働省は取っているようです。



最後に


 10月25日時点では、沢井製薬をファイザー(マイラン)以外に「家族性高コレステロール血症」の効能追加の承認を取得したと発表した会社はなく、第一三共エスファのAGを除き、先発製品と同じ効能・効果のジェネリックは沢井製薬とファイザー(マイラン)のみです。他方、「高コレステロール血症」の患者数と比べると「家族性高コレステロール血症」の患者数は多くありません家族性高コレステロール血症」の効能追加が、市場にどのようなインパクトがあるのかとても興味があるところです。
 また、沢井製薬とファイザー(マイラン)の効能追加を受けて、他のジェネリックがどのようなう動きを見せるのにも注目です。







1 件のコメント:

  1. 特許5062940に新たに無効審判が請求されました。
    現時点では、審判請求人の情報がJ-Plat-Patに収録されていないので、不明です。
    経過を観察してみようと思います。

    返信削除